2006年12月15日

「AA」第一部鑑賞

JR水道橋の駅に降り立って、小雨まじりの銀杏黄葉を横目にアテネフランセに至る坂道を
急いだ。ことごとく真新しいビルと化した御茶ノ水の丘(神田駿河台)にあって、
間章が駆け抜けた70年代の佇まいそのままのアテネフランセの学舎が際立って見えた。
エレベーターはないので年季の入った階段で4階の映写室に赴いた。
何事にも几帳面な木村哲也氏は、すでに着席されていた。
滑り込みだったにもかかわらず、前の方でゆっくり座れ、
初回上映ということで青山真治監督の挨拶を聞けたのも幸いだった。
この長編のドキュメンタリー映画は、砂金を掬うような作業だったと、
その功労の後味を反芻しているかのようだった。
この監督自らの挨拶も、もう既にドキュメンタリー映画の一部であるかのようだった。

aa04.jpg

第一部は、灰野敬二のフリーインプロビゼーションのギターソロの演奏で始まった。
独奏といえどもフリーキーでエキセントリックなものだった。
それは、間章という極北の彗星のような人間像を炙り出すために、12体の惑星に
独白させるかのようなインタビュー形式のドキュメンタリー作品を象徴するに相応しい。
同時に、あの時代の彼らの活動の深層の闇に灯る焔を暗示するプレリュードそのものだ。
弾き終えた奏者が闇に消え去るカツカツという鋭角な靴音に心酔した。
章題に則った語りが、惑星の顔を変えて行きつ戻りつ繰り返される。
基本的には終止この軌道が続く。アングルもほぼ固定的だ。
長いので睡魔と闘いながらの鑑賞を強いられる。
一字一句も聞き漏らすまいとスクリーンを見詰め、耳を傾ける。
そんな心持なので、語り部の躊躇や沈黙の間さえ惜しまれる。
多角的な切り込みを映像で見せ聞かせてくれるので、読書が不得意な私にとっては、
またとない良い機会だった。内容のエッセンスは我が心に仕舞いこまれたと思う。

第一部の締め括りは、大友良英のノイジーなターンテーブル奏。
この場に及んでは、かなり長いので映像的にもサウンド的にも忍耐を必要とする感は
禁じえないのではないか。どうせなら阿部薫や近藤等則の演奏シーンも欲しかった。
灰野敬二のソロやターンテーブルでのノイズをスクリーン上とはいえ久しぶりに聴いた。
コマーシャリズムからあえて逸脱した音楽の何たるかを考えさせられる。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
去る2006.1.21、於東京厚生年金会館での
「新宿ニュー・イヤー・ジャズ・フェスティバル06」で目にしたニュー・ジャズ・
オーケストラのリーダー大友良英、そしてジョン・ゾーン・グループの
近藤等則が存分に語っていて聞き応えがあった。
もちろん他の老若評論家の率直な語り口にも含蓄があった。
副島輝人や平井玄が新宿ピットインのニュージャズホールや、現存するサムライの前身の
ピットイン・ティールームに言い及んだ辺り、他人事ではないので身を乗り出した。
新宿を舞台にした日本フリージャズの歴史の一頁が色褪せることなく、
またこの映画でもって更新された。

音楽もさることながら、それ以前に素顔の人間に接することができた。
自由奔放な演奏家や評論家の弁から、あの70年代を生き急いだ間章の非凡な人間像が、
青山監督の思惑通り砂金の一粒一粒拾い集められ、
類稀のないドキュメンタリー作品として精錬された。
新宿にいて同時代の人間として別世界を見せられたようで、恐縮するばかりだ。
間章の灯した焔は「AA」という松明に引継がれた。

※高校生だった大友良英が阿部薫に出会ったエッセイが面白いので一読を。
▽『ONJQ + OE』ライナー・ノート「フリージャズに出会った頃」
http://www.japanimprov.com/yotomo/yotomoj/essays/freejazz.html

*写真は舞台挨拶をする青山真治監督
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☆ドキュメンタリー映画「AA」〜音楽批評家・間章/全6章一挙上映!
2006.12.12〜12.21、(17日は別会場)
神田駿河台2-11 アテネ・フランセ4F
※初日は上映前に青山真治監督の挨拶あり
13:00〜 第1部(第一章〜第三章)
17:20〜 第2部(第四章〜第六章)
特別鑑賞券\2,500・当日券\3,000[第1部+第2部]2枚綴
▽アテネ・フランセ文化センター
 http://www.athenee.net/culturalcenter/
▽「AA」公式サイト
 http://www.aa-movie.com
▽阿部薫に憑かれ「間章」のカテゴリ/木村哲也
 http://abe-kaoru.seesaa.net/category/1092836-1.html
22-1894
posted by 二健 at 01:00| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | 映像 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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