2007年05月31日

映画「バベル」鑑賞

アメリカ映画「バベル」を観た。
元々旧約聖書のバベルの塔伝説には興味があった。

新宿の出来立てのシネコン「新宿バルト9」へ初めて行ってみた。
画材の世界堂の隣の大型ビルだ。新宿3丁目のバベルの塔か。
エレベーターはよくあるシースルー。目のやり場に困らない。
平日の朝一番の回なので、人は疎らだった。
…にもかかわらず全席指定とのことで、
エスカレーターで2階下のチケット売り場に戻され、
10数人の列に並ぶことになった。
がら空きの場内で、わが指定席G-13の隣席には、
ハンバーガーをガサゴソついばんでいる他所の女の子。
彼女は終わってラストクレジット中、暗いうちに退場された。
明かりが点くと、その席の床には紙ナプキンが散乱していた。
風袋からして私の狼藉と間違われそうで後味が悪かった。
いずれにしても、本道ではないそんなことには気をとられずに、
久しぶりの映画鑑賞を享受した。

始めは、なんだかなー?って心持だった。
モロッコ少年のモツコリやら岩陰でのシコシコ場面は、
70年代前後のATG(日本アート・シアター・ギルド)の兎小屋映画のようで
気恥ずかしかった。天下のアメリカさんのメジャー映画で、
そんなせせこましいことのリアリティ出さなくても…、と思った。
確か「サード」でもこれをやる場面があって赤面した。
やはり映画は独りで観るのが無難か。
赤面と感涙、これは独りで居る時に限る。
感涙はご最もなのだが、観客に赤面させるとはけしからん。

しかし、モロッコ少年の、他愛ない観光バス試し撃ち事件が
起こった時から見応えがあった。
物語は、モロッコとメキシコとアメリカの国境辺と、
東京が舞台で、それは因果関係がある現在進行形のドラマ。
夫婦でモロッコを旅している主役のアメリカ人の俳優は、
どこかで見たことがあるなと思ったら、
殺人鬼映画「セブン」の主役刑事のブラッド・ピットだった。
「バベル」と「セブン」は、キリスト教で云う悪徳の見地から
現代の人間社会の暗部を描いたという点では同類の映画だ。
文明社会への問題提起として、あるいは悪趣味もそれなりの
必要悪があって、興行収益を上げるために、
醜悪の限りを尽くして見せる映画作りも、
また逆説的に自由で平和な世の中なればこそと思う。

七つの大罪の当事者たる文明人へ天誅を加える「セブン」の
悪役の一匹狼。正義を守る狼と悪魔の狼の死闘によって、
何の疑いもなかった常識的な善悪の考え方が揺さぶられる。
もって行く場のない悲壮感だけては済まされない。

一方「バベル」は、人の世の遠い国、即ちまるっきり別文化の
三形態をリアルにリンクし、時空の枠を串刺し実相を暴き出す。
地球上の三形態の地点を直線で結べば、大きな三角形が描ける。
このことはイスラムの六芒星を成す三角形と合致する。
アメリカ映画だけに、ドル紙幣のピラミッドの図案とも
関係がありそうだ。(「ダビンチコード」っぽくなった) 
究極の話、母親に自殺された聾唖の女高生・綿谷チエコ
(菊地凛子)の自己アピールたるノーパンデルタに象徴される。
地球に跨ったマクロなトライアングルと、
極東の女子高生に集約させたミクロなバージンデルタ。

観念したモロッコの少年は銃を叩き折った。
別れの時、モロッコの村民は代償を受け取らなかった。
主役夫婦の子供を預かるメキシカンの乳母は強制送還された。
東京の聾唖の少女は生まれたままの姿になった。

アラビックな音楽と相俟って砂塵が舞う。
陽気なメキシカンが踊り、暴走する。
東京はメランコリーな夜を灯し続ける。


(初出のJiken mixi 日記に加筆推敲)
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2006 アメリカ 2007.4.28公開
<一発の銃弾が、孤独な心を繋ぎあわす…>
監督 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演 ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット
   ガエル・ガルシア・ベルナル、役所広司、菊地凛子
   アドリアナ・バラッザ
オフィシャルサイト http://babel.gyao.jp/       25-2318
posted by 二健 at 17:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 映像 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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