2007年06月22日

「マコ太宰治をよむ―走れメロス」感慨

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(主催者としての謝意と感想です)

お蔭様で開演前に満席になり、お客様に恵まれた朗読会でした。
私も込みで俳ラ主客系の5名以外は、ほとんど奥山氏のお客様で席が埋まりました。
去年の桜桃忌公演初回の入りは寂しいものでしたが、
今回は打って変わって三倍の入りでした。
何をおいても奥山氏の箔のついた朗読芸と人望がものを言った一幕でした。
松本氏による尺八の音響付きで「走れメロス」の朗読を聞けたのは、
またとない機会でした。
物語上のメロスの葛藤する切羽詰った心境の振幅が、
メリハリのある朗読と尺八の呂律によって絶妙に表現されました。
静寂の空間を演出するために、窓を閉ざし肩を寄せ合っている会場ながらも、
あえて冷房を切っての実演でしたが、暑さも忘れさせるほどの緊迫感で、
終幕まで走り抜けました。
8本の持ち替え尺八も、朗読も、まったくの生の音で、
電気的増幅はなかったことも、真剣勝負のようで功を奏したと思います。
やはり、芸の音響の基本はアコースティックだと思います。

今回の朗読公演に接して「走れメロス」について、ことさら思いを新たにしました。
極限状態に置かれた、あるいは自らそうした人間が、
その状態の深刻度と濃密さが増すにつれ、どう思いあぐね、どう行動して行くのか、
その連続した過程のそれぞれにわくわくさせられました。
利己の鬼と利他の神の誘惑と信念に鬩ぎ合い、
徒に揺さぶられる人心の織りなす綾。
そして自己犠牲を余儀なくさせられる友情や義心の真価が表れる実践。
メロス当人は勿論のこと、王たる者の改心へと昇華へ導く結末で、
全ての柵や軋轢が開放され救済されます。
所詮作り話と言えども、人心の可能性としては真実味があり希望が持てました。

読書としてただ活字を追って読み進め、イメージする「走れメロス」にはない、
別物の、別格の「走れメロス」の緊迫した二重の高揚感が、
奥山眞佐子と松本浩和の「マコ太宰治をよむ」桜桃忌公演にはあったと思います。

来年の桜桃忌も乞うご期待です。
                            26-2407
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■[SAMURAI LIVE 13]奥山眞佐子「マコ太宰治をよむ」
 桜桃忌公演 With 松本浩和(尺八)
・去年の太宰作品『美少女』朗読に次ぐ第二弾
□作品:『走れメロス』
□日時:2007年6月19日(火) 開場18:30、開演19:00
□会場:サムライ 03-3341-0383 □料金:2500円(1drink)

▽奥山HP「おとなってなに」→新着情報
 http://hw001.gate01.com/otonattenaniweb/
▽初出:BBS「サムライブルース」
 http://6112.teacup.com/samurai/bbs
         Poster Design & Pictures by Jiken.
posted by 二健 at 15:14| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月14日

感激「あ・うん」観劇

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  ◎立川志らく劇団「下町ダニーローズ」第5回公演 「あ・うん」
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  日時:2005.11.8(火)〜12日(土) 開演15:00〜/19:00/
     ※12日(土)のみ14:00〜 /18:00〜 全10公演
  会場:神楽坂・theatre iwato (大久保通り)
  料金:前売3,000円 当日3,300円 全席自由 (チケット予約で完売)
  出演:柳家一琴 立川志らく 酒井莉加 山咲小春 長宗我部陽子 林家彦いち
     原武昭彦 立川談四楼 阿部能丸 立川文都 三遊亭楽春 内藤忠司
     平地レイ 入月謙一 桜井麻美 鈴木夏未 河合謙介 片岡一郎
     高慎太郎 奥中惇夫 根本順善 立川志ら乃 立川こらく 立川らく太
  特別出演:小林美江(東京ボードビル)

  □参考URL
  「立川企画」
  http://home.c07.itscom.net/tatekawa/

  「一琴のちょっとひとこと」 (※ここからお写真拝借致しました)
  http://members.jcom.home.ne.jp/yanagiyaikkin/

  「酒井莉加トップ」
  http://www.geocities.jp/sakai_rika/
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小春日和の昼下がり、立川志らく劇団「下町ダニーローズ」第5回公演「あ・うん」を
観に行って参りました。役者の莉加ちゃん(水田さと子役)や、一琴さん(水田仙吉役)
ファンのキムテツさんが、前もって予約しておいてくれたので、私は当日行けば良い
だけなので助かりました。30分前に行ったのですが、氏は既に並んでおられました。
キムテツさんと仲良く最前列体育座りで、期待のお芝居を十分堪能しました。予約者
だけで超満席の熱気と舞台の泣き笑い喜劇の充実ぶりに、身も心も翻弄されました。
本来の「あ・うん」は、そんなお笑い話ではないと思うのですが、志らく座長の手に
掛かっては、第一級の喜劇に様変わりしてしまうのでしょう。役者の皆様の役柄に
留まらず、持ち前の個性が生かされていて、役と個の二重の味わいが、より一層
可笑しみを増して感涙の雨霰ものでした。私が40年前、つまり中学生の頃、
白黒テレビで見た喜劇の舞台を彷彿する底抜けの面白さがあり懐かしく思えました。
また折々斬新でテンポも軽快で、喜劇の新しい底力を痛感しました。
水田仙吉(柳家一琴)と門倉修造(立川志らく)の葛藤する友情、その娘や妻たちと
お妾ら女性陣の混在錯綜する人情物語の妙技妙演の数々。良い思い出となりました。

余談ですが、私は永遠の脇役爺さんだった左卜全が大好きです。
卜全のすっとぼけた一拍二拍三拍遅れのマヌケな間の面白さは何とも言えません。
その立ち姿の蟹股と、へったれ眉毛に、どんぐり眼と落花生形に開いた口などの
おどけ面など、単純な台詞も含めて総合的に、なんて面白いキャラクターなんだろう
と思いました。黒沢明監督の映画「生きる」でのお通夜のシーンの、沈黙から突然の
怒り発言と、ラストの役所の日常シーンでの横でただ口をあんぐり開けている姿が
卜全らしくて忘れられません。あの方は立派な演技というよりか、地でダサい芝居
やって、喜劇役者として以上にさまになっているから魅力的なのだと思います。
それに通定するものが今回の「あ・うん」の役者の方々に見て取れました。

冗談(笑い)が取り持つ和の精神を、日中戦争勃発という深刻な時代背景を逆手に取り、
まんまと順風として浮かび上がらせていたと思います。
噺家さんならではの芝居だからこそ「あ・うん」という向田邦子の小説を好素材と
して奇想天外な喜劇に仕上げられたのでしょう。
清純な娘のさと子(適役の酒井莉加)の視点で、物語が語られて進行していくドラマ
仕立てが功を奏していました。無垢な視点から、大人たちやその社会を見つめている
からこそ、深刻で滑稽な泣き笑いの渦が深く感動的なのだとつくづく思いました。
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11-825
posted by 二健 at 21:16| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 舞台 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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